【保存版】マイクロ法人の作り方|個人事業主+法人で社会保険料をグッと下げる方法

「国民健康保険と国民年金が高すぎる…」
そんなフリーランス・個人事業主の新しい選択肢がマイクロ法人です。
ざっくり言うと、
- 生活費はこれまで通り「個人事業」の売上から出す
- 別に超小さい会社(マイクロ法人)を作り、そこで役員として社会保険に入る
この二刀流を使うことで、
- 国保+国民年金よりも、健康保険+厚生年金の保険料を抑えやすくなる
- 会社側で経費にできる範囲が広がり、節税しやすくなる
ただし、「誰がやっても得する魔法のスキーム」ではありません。設立コストや維持費、税務リスクもあるので、仕組みと作り方をきちんと理解してから動きましょう。
この記事でわかること
- マイクロ法人の基本
- 合同会社前提での具体的な設立手順
- 個人事業主+マイクロ法人の設計イメージ
- 注意点・よくある勘違い
※本記事は一般的な情報の整理であり、節税・社会保険の最適解は人によって変わります。実際に設立する前に、必ず税理士・社労士などの専門家に相談してください。
1. マイクロ法人とは?仕組みとメリット
マイクロ法人のざっくり定義
「マイクロ法人」という名前の制度があるわけではなく、代表者1人(+家族くらい)で回す、超小さい株式会社・合同会社を便宜上そう呼んでいるだけです。
よくあるパターンは、
- 代表者=個人事業主(フリーランス)
- マイクロ法人は資産管理・一部業務の受け皿として使う
- 法人の役員報酬を低めに設定し、その報酬をもとに健康保険+厚生年金に加入する
という形です。
主なメリット
マイクロ法人 4つのメリット
- 社会保険料を抑えやすい
- 個人事業主+法人の二刀流で所得分散できる
- 経費にできる範囲が広がる
- 「法人」という看板による信用力アップ
① 社会保険料を抑えやすい
個人事業主のままだと「国保+国民年金」で、所得が増えるほど保険料が跳ね上がります。マイクロ法人で役員報酬を低めに設定すると、健康保険+厚生年金の等級が低くなり、保険料も低くなります。
② 個人事業主+法人の二刀流で所得分散できる
個人で受ける仕事と、法人で受ける仕事を分けることで、所得税・住民税・社会保険料のバランスをコントロールしやすくなります。
③ 経費にできる範囲が広がる
役員報酬、役員の社会保険料の会社負担分など、個人事業だけのときより経費計上できるものが増えるイメージです。
④ 「法人」という看板による信用力アップ
取引先や金融機関から見ると、個人より法人の方が対外的な信用が上がりやすいというメリットもあります。
2. マイクロ法人のデメリット・向いている人
デメリット・リスク
・設立費用がかかる
株式会社:約20〜25万円/合同会社:約6〜10万円(電子定款なら安い)
・毎年の維持コストが発生
赤字でも法人住民税の均等割(約7万円〜)がかかり、会計ソフト代や専門家報酬なども必要になりがちです。
・社会保険への加入が原則必須
法人化=原則として健康保険・厚生年金に加入。「社保に入りたくないから法人にしない」は基本的に通用しません。
・税務調査で否認されるリスク
個人と法人で同じ仕事・同じ売上を分けて申告すると、「租税回避スキーム」と見なされる可能性があります。
どんな人に向いている?
マイクロ法人が向いている人
- 年間利益400〜600万円以上の個人事業主
- 今後も長くフリーランスを続ける予定がある人
- 会計ソフトや確定申告に慣れていて、会社を1つ増やしても管理できそうな人
「まだ売上が安定していない」「副業を始めたばかり」の段階なら、まずは個人事業だけで十分なことが多いです。
3. まず決めること6つ(事前設計編)
事前に決めておく6つのこと
- 株式会社か合同会社か
- 会社名・本店所在地
- 資本金の金額
- 事業目的
- 設立日(登記日)
- 決算月
① 株式会社 or 合同会社? ― 基本は合同会社でOK
株式会社
登録免許税:最低15万円/定款認証:3〜5万円+謄本代 など
合同会社
登録免許税:資本金の0.7%(最低6万円)/定款認証:不要
この差があるので、株式会社の方が約14万円ほど高くなりやすいというのが動画のポイントです。上場や大きな資金調達を目指すなら株式会社、マイクロ法人(節税+社保目的)なら基本は合同会社でOKです。
② 会社名・本店所在地を決める
会社名(商号)
「〇〇合同会社」「合同会社〇〇」のどちらか。同一住所に同名が無ければOKです。
本店所在地
自宅住所、レンタルオフィス、バーチャルオフィスなど。将来の郵便物・銀行口座・税務署届出にそのまま使う住所になります。
③ 資本金 ― 100〜857万円がよく挙げられる理由
合同会社の登録免許税は「資本金×0.7% or 6万円」の高い方です。
- 資本金857万円までは、857万円×0.7%≒59,990円 → 最低税額6万円が適用
- つまり資本金857万円までは登録免許税が一律6万円
そのため、資本金は100〜857万円くらいの範囲で決めておくと、登録免許税を最小限(6万円)に抑えやすいという考え方になります。マイクロ法人なら、現実的には10万〜100万円程度で始める人が多いイメージです。
④ 事業目的を決める(ここ超重要)
事業目的は、登記簿に載る会社の「やることリスト」です。
- 銀行口座の審査のときも必ずチェックされるポイント
- 「投資」「副業」みたいなぼんやりワードだけだと、口座開設を断られることもあると言われています
事業目的の例
- Webメディアの企画・運営
- インターネットを利用した広告代理業
- セミナー・講座の企画運営
- 有価証券・暗号資産の保有・運用 など
「今やっていること+将来やる可能性があること」を、漏れなく・怪しくなく書くのがコツです。
⑤ 設立日(登記日)をいつにするか
設立日は登記申請日(法務局に出した日)になります。
動画メモでは「2日以降」とありましたが、これは月初1日を避けて、社会保険・税金の月割計算を少しでも有利にするためのテクニックとよく言われます。
また、法人は赤字でも毎年法人住民税がかかるので、「無駄に早く作りすぎて、売上のない月が長く続く」と損になりがちです。
⑥ 決算月を決める(設立月の前月末が鉄板)
「決算日 → 設立月の前月末」というのもよくある王道設定です。
- 4月10日設立 → 3月31日決算
- 9月5日設立 → 8月末決算
こうしておくと、
- 個人の確定申告(1〜12月)と法人の決算時期をずらせる
- 繁忙期を避けて決算・申告スケジュールを組みやすい
4. 実際の設立手順7ステップ(合同会社想定)
設立手順の全体像
- 会社印を作る
- 定款を作成する
- (株式会社なら定款認証)
- 資本金の払い込み
- 登記書類の作成
- 法務局へ登記申請
- 税務署・年金事務所などへの各種届出
ステップ1:会社印を作る
代表者印(実印)・銀行印・角印(認印)の3点セットをネットで注文します。楽天などで5,000円前後のセットが多いです。
ステップ2:定款を作成する
定款には、商号(会社名)・目的(事業内容)・本店所在地・社員(出資者)の氏名・住所・出資金額・事業年度(決算月)などを記載します。
最近は、freee会社設立やマネーフォワード会社設立などの無料ツールでテンプレ入力→自動作成ができます。紙の定款だと収入印紙4万円が必要ですが、電子定款ならこの4万円が不要。ツール利用の手数料として数千円(5,000円前後)を払うだけで済むケースが多いです。
ステップ3:定款認証(株式会社のみ)
合同会社は定款認証が不要です。株式会社の場合は、公証役場で
- 認証手数料:3〜5万円
- 謄本代:数千円
がかかります。マイクロ法人なら、この手間とコストを避けるために合同会社一択でOKです。
ステップ4:資本金の払い込み
自分個人名義の銀行口座に、資本金額を一度入金します。通帳の「表紙」「1ページ目(名義・口座番号)」「入金が分かるページ」をコピーして、払い込み証明の資料として使います。
ステップ5:登記書類の作成
合同会社の登記で主に必要なのは、
- 登記申請書
- 定款
- 代表社員の就任承諾書
- 本店所在地決定書(必要な場合)
- 資本金の払込証明書
- 代表者の印鑑証明書
- 会社の印鑑届書
- 登録免許税の領収書(オンラインなら電子納付)
などです。会社設立ツールや司法書士に依頼すれば、フォーマットに入力するだけで一式出力してくれます。
ステップ6:法務局へ登記申請
管轄の法務局に、設立日当日かその前後で書類を提出します。登録免許税は、合同会社なら「資本金×0.7%(最低6万円)」を収入印紙 or 電子納付します。
書類に不備がなければ、だいたい1〜2週間ほどで登記完了となり、「履歴事項全部証明書」「印鑑証明書」が取れるようになります。
ステップ7:設立後に必ずやる届出
登記が完了したら、次の手続きも忘れずに。
- 税務署:法人設立届出書/青色申告の承認申請書 など
- 都道府県税事務所/市区町村:法人設立届出書
- 年金事務所・協会けんぽ等:健康保険・厚生年金の新規適用届
- 労働基準監督署・ハローワーク(従業員を雇う場合):労災保険・雇用保険の手続き
ここまで終わって、ようやく「社会保険に加入したマイクロ法人」としてスタートします。
5. 個人事業主+マイクロ法人「二刀流」の基本設計
収入の分け方イメージ
・個人事業主側
これまで通り本業の売上を受け、生活費もこちらから出します。
・マイクロ法人側
資産運用・一部の仕事の受け皿としつつ、代表者への役員報酬は最低等級に近い金額(例:月4〜5万円台)に抑えます。→ 社会保険料を最小限にする狙い。
こうすることで、
- 社会保険料…マイクロ法人の低い報酬ベースで計算
- 所得税・住民税…個人事業の所得+役員報酬の合計で計算
というバランスを取りにいくイメージです。
絶対にやってはいけないこと
NGパターン
- 個人事業と法人で同じクライアント・同じ仕事を分けて請求する
- 売上を恣意的に個人⇔法人で移し替える
- 銀行口座・帳簿をごちゃごちゃに混ぜる
こういう運用は、税務署から「租税回避(節税を超えた脱法スキーム)」と見なされるリスクが高まります。
「個人の事業」と「法人の事業」は、売上先・契約・口座・帳簿など、できる限り分ける。これは絶対ルールです。
6. マイクロ法人設立前にチェックしたい3つのポイント
設立前のチェックリスト
- トータルでどれくらい得になるか試算したか?
- 会社員なら就業規則を確認したか?
- 税理士・社労士など専門家に相談したか?
1)本当にトータルで得かどうか、シミュレーションした?
設立費用+毎年の維持費(住民税7万円〜)を含めて、「何年間でどれくらい得になるのか」を必ず試算しましょう。
2)会社員の場合は就業規則を確認した?
副業禁止/会社に無断で法人を作ると、就業規則違反になるケースもあります。
3)専門家に一度は相談した?
マイクロ法人は、やり方次第で大きなメリットもあれば、思ったより得にならず「維持コストだけ増えた…」となるケースもあります。
7. まとめ|マイクロ法人は「個人事業+法人」の設計図がすべて
最後にポイントだけもう一度整理すると、
- マイクロ法人は、個人事業主+小さな法人の二刀流で社会保険料や税負担をコントロールするスキームである
- 形態は合同会社がほぼ一択 → 株式会社より設立コストが約14万円安く、定款認証も不要
- 資本金は100〜857万円の範囲だと、登録免許税を6万円に抑えやすい
- 事業目的・決算月は、銀行口座/税務スケジュールまで見据えて設計する
- 設立手順は 1. 印鑑作成 2. 定款作成(電子定款で印紙代4万円カット) 3. 資本金の払い込み 4.(株式会社なら定款認証) 5. 登記書類作成 6. 登記申請 7. 税務署・年金事務所などへの各種届出
- 「個人と法人の事業をしっかり分ける」「専門家に相談する」が、安全に活用するための大前提
このあたりを押さえておけば、「個人事業主+マイクロ法人」という選択肢を検討するための土台はばっちりです。

