当たり屋が存在する理由|なぜ“わざと事故を起こす人”がいるのか?保険とお金の裏側

ニュースやSNSでときどき見かける「当たり屋」。
車や自転車にわざと近づいて転んだり、ぶつかりにいったりして、「痛い」「病院代を払って」とお金を要求する人たちです。
正直、多くの人はこう思うはずです。
- 「そんなことして、バレたらどうするの?」
- 「本当にお金になるの?」
- 「そもそも、なんでそんなことをする人がいるの?」
この記事では、当たり屋が存在する理由を、
- お金の視点
- 保険の仕組みの視点
- 法律・リスクの視点
から整理しつつ、最後に「狙われにくくなるための現実的な対策」もまとめていきます。
- 当たり屋は「不安」と「お金が動く仕組み」を悪用して成立している
- 背景には「事故=運転者が悪い」という空気と、保険・示談でお金が動きやすい構造がある
- やるべき対策は安全運転+記録(ドラレコ等)+正しい事故対応の3点
- その場で現金を払って終わらせない(警察・保険会社へ)
当然ですが、当たり屋行為は完全にアウトな犯罪です。ここでは「やり方」を説明するのではなく、仕組みを知った上で自分の身を守るための知識として読んでもらえたらと思います。
当たり屋とは?ざっくり定義
「当たり屋」という言葉には、明確な法律上の定義があるわけではありませんが、一般的にはこんなイメージです。
- 車やバイク、自転車、歩行者などを狙い、わざと接触・転倒する
- 実際の被害よりも大きくケガを装うこともある
- その場で現金を要求したり、後から治療費や慰謝料を請求する
つまり、「故意に事故っぽい状況を作り、お金をもらおうとする人」です。
中には本当に被害にあっているケースもありますが、「どう考えても動きがおかしい」「不自然な転び方をしている」など、違和感のある事故が当たり屋と呼ばれることが多いです。
当たり屋が“ビジネス”として成り立つ理由
そもそも、なぜ当たり屋は消えずに存在し続けるのでしょうか。背景には、主に次の3つの要素があります。
- 事故が起きると「運転者が悪い」空気が強くなりやすい
- 保険・示談の仕組みでお金が動きやすい
- 証拠が弱いと水掛け論になりやすい
① 「事故=加害者が悪い」という空気
交通事故が起きると、多くの場合、
- 車 vs 歩行者・自転車
- 車 vs バイク
といった構図になります。
このとき、世間的にはどうしても「車側が悪い」という空気が強くなりがちです。
- 「鉄の塊である車」と「生身の人間」
- 「運転している側」と「歩いている/乗っている側」
という構図から、たとえ相手の動きに問題があったとしても、運転していた側が心理的に弱くなってしまうことがあります。
この「罪悪感」や「立場の弱さ」を、当たり屋は悪用します。
② 保険や示談で「お金が出てくる」構造
もうひとつの大きなポイントが、保険の存在です。
車を持っている人の多くは、
- 自賠責保険(強制)
- 自動車保険(任意保険)
に加入しています。
何かあったとき、
- 「最終的には保険会社が払ってくれる」
- 「とりあえず示談で済ませたい」
と考える人も少なくありません。
当たり屋からすると、
- 相手の罪悪感+「保険でどうにかなるだろう」という心理
- 保険会社からの支払いが絡む可能性
があるため、「お金が取れる余地がある」と感じやすいわけです。
ちなみに、日常生活の事故でも、
- 個人賠償責任保険(自転車保険にセットされていることも多い)
- 火災保険や自動車保険に付帯している賠償責任の特約
などからお金が支払われることがあります。
本来は、「うっかり他人にケガをさせてしまったとき」などを助けるための保険ですが、悪用されてしまうケースもゼロではありません。
③ 証拠がなければ「水掛け論」になりやすい
ドライブレコーダーや防犯カメラがないと、
- 「ぶつかってきた」
- 「いや、勝手に転んだ」
と言い合いになってしまうことも。
この「証拠がはっきりしづらい状況」も、当たり屋がつけ込むスキを生んでしまいます。
保険との関係:なぜ当たり屋は“保険金”を狙うのか
ここからは、少しだけ保険の中身に踏み込みます。
当たり屋が絡む場面で関係してくることが多いのは、主に次のような保険です。
- 自動車保険(任意保険)の対人・対物賠償:相手への損害賠償をカバー
- 人身傷害保険・搭乗者傷害保険:自分や同乗者のケガへの補償
- 個人賠償責任保険:日常生活の賠償(特約で入っていることも多い)
ポイントは、最終的に「保険会社のお金」が動く可能性があるということです。
当たり屋は、
- 「どうせ保険で払うんでしょ?」という相手の心理
- 保険会社との示談・交渉の煩わしさ
につけ込んで、高めの金額を要求してくることがあります。
もちろん、保険会社は不自然な事故や請求に対して調査を行うこともありますし、故意の事故や虚偽の請求は支払われない・返還を求められることもあります。
ただ、現場レベルでは、
- 「面倒だから少し払って終わらせたい」
- 「警察沙汰にしたくない」
という人もいるため、当たり屋がゼロにならない土壌が残ってしまう、というわけです。
法律的には完全にアウト:立派な犯罪です
当たり屋行為は完全に犯罪です。ここでは「やり方」ではなく、仕組みを理解して自分の身を守るための情報として整理しています。
当たり前ですが、当たり屋行為は完全に犯罪です。
- わざと事故を起こす(=故意に危険な行為をする)
- 実際よりも大きな被害を装って保険金を騙し取る
といった行為は、ケースによって、
- 詐欺罪
- 保険金詐欺
- 偽計業務妨害
- 恐喝(脅すような言い方でお金を要求した場合)
などに該当しうる行為です。
「バレなければいい」「ちょっとした小遣い稼ぎ」では済まず、逮捕・前科・賠償請求につながる可能性が高い、非常にリスクの大きい行為だということは強調しておきたいポイントです。
当たり屋に狙われにくくなるためのポイント
じゃあ、普通に生活している私たちはどう身を守ればいいのか。
完全にリスクをゼロにはできませんが、「狙われにくくする」「もしものときに困らないようにしておく」ための現実的な対策をまとめます。
- 記録(ドラレコ等)があると水掛け論になりにくい
- 危ない場所ではとにかく徐行(事故そのものを減らす)
- 日常生活の賠償は個人賠償責任保険が強い
① ドライブレコーダー・自転車用カメラを活用する
- 車には前後タイプのドライブレコーダーを付けておく
- 自転車にも、ヘルメットカメラやハンドルに付けるカメラなどを検討する
映像が残っていれば、客観的に状況を説明しやすくなり、「水掛け論」になりにくくなります。
② 交差点・駐車場・見通しの悪い場所では“とにかく徐行”
こういう場所では、
- スピードを極端に落とす(歩くくらい)
- 左右を大きめに確認する
- 自転車・歩行者がいないかを常に意識する
といった基本的な安全運転が、そのまま対策にもなります。
③ 日常生活では「個人賠償責任保険」に入っておく
逆に、自分が加害者側になってしまうケースもありえます。
- 自転車で歩行者にぶつかってしまった
- 子どもがボールを飛ばして他人の物を壊した
など、日常生活の事故に備えるために役立つのが、個人賠償責任保険です。
多くの場合、
- 自動車保険
- 火災保険
- 自転車保険
の特約として付けることができます。
当たり屋対策というより、「普通の事故で人生が詰まないようにする」ための保険として、優先度が高い保険のひとつだと言えます。
もし「当たり屋かも?」と思ったときにやるべきこと
「この人、動きがおかしい」「わざとぶつかってきた気がする」――そんな違和感を覚えたとしても、こちらが勝手に決めつけていいわけではありません。
大事なのは、いつも通り「正しい事故対応」をすることです。
- その場で現金を払って終わらせない
- 必ず警察を呼ぶ(人身・物損にかかわらず)
- 自分の保険会社に連絡(指示に従う)
- 可能なら現場の写真・周囲の状況を記録
- 目撃者がいれば連絡先を確保
その場で感情的になって話をまとめようとすると、
- 後から「言った・言わない」のトラブルになる
- 対応を誤って損をする
など、状況が悪化することがあります。
「違和感は心の中で持ちつつ、冷静に正しい手順を踏む」のが、一番強い対応です。
まとめ|当たり屋の本質は「不安」と「保険のお金」の悪用
最後に、この記事の内容をまとめます。
- 当たり屋は、わざと事故っぽい状況を作ってお金を取ろうとする人のこと
- 背景には、「事故=運転者が悪い」という空気と、保険でお金が動きやすい仕組みがある
- 当たり屋行為は、詐欺罪・恐喝などに該当しうる完全な犯罪
- 私たちにできるのは、安全運転・記録(ドラレコ)・正しい事故対応で自分の身を守ること
- 日常生活の事故には、個人賠償責任保険も役立つ(優先度は高め)
当たり屋のニュースを見ると、不安になるかもしれません。
でも、保険の仕組みと、自分が取るべき行動を知っておけば、必要以上に怖がる必要はありません。
保険は本来、「まじめに生活している人を守るためのお金の仕組み」です。
当たり屋のような存在に振り回されず、数字と事実をベースに、自分と家族の安全を守る選択をしていきましょう。






