個人事業主の経費にできるものはどこまで?|税金・青色申告・節約のリアルなライン

「個人事業主になれば、家賃もスマホ代も全部経費にできて、ほとんど税金払わなくて済むんでしょ?」
こう思っている人、実はめちゃくちゃ多いです。
たしかに、個人事業主になると会社員のときにはただの生活費だったものが、経費として認められるケースも増えます。でも、だからといって
• 家賃100%
• 車の維持費100%
• カフェ代・飲み代ぜんぶ
を経費にしてしまうと、一発アウトの“なんちゃって節税”になりかねません。
この記事では、これから開業届を出そうとしている人や、すでに副業で稼ぎ始めた人向けに、できるだけ噛み砕いて解説します。
①個人事業主とは?会社員との違いをサクッと整理
まずは、前提の「個人事業主って何?」から。
個人事業主=自分の名前でビジネスをしている人です。
会社を作らずに、フリーランスや副業で収入を得ている人は、基本的にはみんな個人事業主だと思ってOK。
会社員との一番大きな違い
という流れになっています。
つまり、税金まわりはほぼ会社まかせです。
立場になります。
「売上-経費=所得」で税金が決まる
個人事業主の税金は、基本的に
課税対象となる所得 = 売上(収入) − 経費
で決まります。
• 売上が変わらなくても
• 経費として認められる支出が増えれば増えるほど
課税される所得が小さくなる → 税金が下がるという仕組みです。
だからこそ、
「どこまで経費にできるのか?」が、個人事業主にとってめちゃくちゃ重要なテーマになるわけですね。
②個人事業主の税金と確定申告の流れ
次に、ざっくりと税金の全体像を押さえておきましょう。
の3つです。
どちらも、先ほどの
売上 − 経費 = 所得
をベースに計算されます。
「所得税+住民税」で大体20%前後になるイメージを持っておくと、節税感覚がつかみやすいです。
確定申告はいつやるの?
個人事業主の確定申告は、原則として
• 対象年:1月1日〜12月31日
• 申告期間:翌年2月16日〜3月15日ごろ
に行います。
この期間内に、
• 所得税の申告
• 納付(銀行・コンビニ・口座振替など)
を済ませておく必要があります。
住民税は、確定申告の内容をもとに自治体が計算して、翌年6月ごろから分割で請求されるのが一般的です。
税金を減らすキーは「経費+青色申告」
同じ売上でも、
• 経費をどこまで認めてもらえるか
• 白色申告のままなのか、青色申告を使うのか
で、最終的に払う税金の額がかなり変わってきます。
ここから先は、いよいよ本題の「経費」の話に入っていきます。
③経費にできるもの・できないもの|「どこまでOK?」の基本ルール
まず押さえておきたいのは、この一行です。
事業に関係する支出=経費 / 純粋な生活費=経費NG
たとえば――
• 仕事のために使うパソコン → 経費OK
• プライベートで行った旅行 → 経費NG
• 自宅兼事務所の家賃の一部 → 条件次第で経費OK
というように、**「その支出が事業とどれだけ関係しているか」**で判断されます。
・完全に生活のためだけの支出 → 家事費
・生活と事業の両方に関係する支出 → 家事関連費
家事費は経費NGですが、家事関連費なら、事業で使っている割合だけを経費にできる可能性があります。
と呼び分けられます。
家事費は経費NGですが、
家事関連費なら、事業で使っている割合だけを経費にできる可能性があります。
家事関連費を、「事業で使っている部分」と「プライベートで使っている部分」に分けることを家事按分と言います。
・自宅家賃なら「作業スペースの面積」
・光熱費なら「仕事時間の割合」
・車なら「仕事で使った走行距離の割合」
経費は「いくら使ったか」よりも、
「その支出が事業とどれだけ関係しているか」が重要。
面積・時間・回数・距離など、あとから説明できる基準をメモしておくと安心です。
④個人事業主の経費にできるもの一覧【代表例】
では、具体的にどんな支出が経費になりやすいのか。
よくある代表例を、ジャンルごとに整理していきます。
自宅で作業している個人事業主・フリーランスは多いはず。
その場合、自宅の一部を事務所として使っている形になるので、家賃や光熱費を一部経費にできます。
例:家賃を面積で按分する
• 自宅全体:40㎡
• 仕事用スペース:8㎡(デスク周りなど)
この場合、
8㎡ ÷ 40㎡ = 20%
ということで、
家賃の20%を経費にするという考え方が一般的です。
光熱費も、
• 作業している部屋の割合
• 作業時間の割合
などをもとに、一定の割合を経費として計上できます。
• スマホ代
• 自宅のインターネット回線
• ポケットWi-Fi など
も、事業に関係していれば経費にできます。
ただし、多くの場合はプライベート利用も混ざるので、仕事で使う割合だけを経費にするのが無難です。
ざっくり割合の決め方例
• 電話・メッセージのうち、仕事の連絡がだいたい半分 → 50%
• ネット回線は、平日昼間はほぼ仕事用 → 60〜70%
など、自分なりの基準を決めておきましょう。
迷ったら、ちょっと控えめの割合にしておくのがおすすめです。
• パソコン本体
• モニター・キーボード・マウス
• プリンター・スキャナー
• AdobeやOfficeなどの有料ソフト
• クラウドストレージ(Dropbox、iCloudなど)
これらは、事業で主に使っているのであれば、基本的には全額経費OKです。
プライベート利用がかなり多い場合は按分しますが、
「仕事用に新しく買ったPC」「仕事用アカウントで払っているサブスク」なら、全額でも違和感は少ないでしょう。
車を仕事で使うケース(営業・出張・仕入れ・納品など)があるなら、
• ガソリン代
• 高速道路料金
• 駐車場代
• 車検・自動車保険・メンテナンス費用
なども経費の対象になります。
ただし、通勤・買い物・レジャーなどプライベート利用も多いなら、走行距離や利用頻度から“仕事で使った割合”を算出して按分するのが基本です。
走行距離で按分する例
• 1か月の総走行距離:1,000km
• うち仕事で使った距離:400km
この場合は
400km ÷ 1,000km = 40%
として、車関連の費用の40%を経費にするイメージです。
• カフェで仕事したときのドリンク代
• 取引先との打ち合わせで使った飲食代
• オンラインサロン・セミナー・勉強会の参加費
なども、事業に直接関係していれば経費になります。
ただしここは税務署からもチェックされやすい部分なので、
• 「ただ友だちとご飯に行っただけ」
• 「実質プライベート飲み会」
のような支出まで経費に入れてしまうのは危険です。
領収書・レシートのメモ欄に
「○○さんとの打ち合わせ」
「新サービスのアイデア出し」
など、目的を書いておくと、あとから自分でも思い出しやすくなります。
⑤経費はどこまで・いくらまで?上限とグレーゾーンの考え方
ここがみんな一番気になるところだと思います。
「結局、経費ってどこまで・いくらまでがセーフなの?」
残念ながら、法律や通達に
「家賃は最大○%まで」
「車は最高△%まで」
といった明確な数字の上限はほとんど書かれていません。
だからこそ、実務的には
“説明できる合理性”があるかどうか
が判断のポイントになります。
・自宅家賃を100%経費にしている(家族も一緒に住んでいるのに)
・車をプライベートでもガンガン使っているのに、維持費の100%を経費にしている
・ほぼ友達との飲み会なのに、全部「接待交際費」で落としている
こういったケースは、税務調査が入ったときにまとめて否認されるリスクがあります。
税率が20%だとして、
・10万円使って経費にすれば → 税金は2万円安くなる
・でも、実際には手元のお金が10万円減っている
「経費を増やすこと」自体を目的にするのではなく、
本当に必要な投資だけをして、認められる範囲はしっかり経費に入れていくバランス感覚が大事です。
⑥青色申告で経費+65万円控除が使えるようになる
ここまでが「経費そのもの」の話でした。
ここからは、同じ経費でも、申告方法によって節税効果が変わるという話です。
個人事業主の確定申告には大きく
• 白色申告
• 青色申告
の2種類がありますが、節税を考えるなら断然青色申告がおすすめです。
青色申告の3大メリット
① 青色申告特別控除(最大65万円)
青色申告をすると、条件を満たせば
• 65万円
• 55万円
• 10万円
のいずれかを、所得からさらに引くことができます。
たとえば、
• 事業の利益(売上−経費)が300万円
• 青色申告特別控除65万円を適用
となれば、
300万円 − 65万円 = 235万円
に税金がかかるイメージです。
同じ売上・同じ経費でも、白色申告のままよりかなりお得になります。
② 家族への給料を経費にできる(青色事業専従者給与)
生計を一にする家族(配偶者や親など)に手伝ってもらっている場合、
事前に届出をしておけば、その家族に支払う給与を経費として計上できます。
• 事業を手伝ってもらう
• その対価として給料を払う
• その給料は経費になる
という流れになれば、家族の中でお金を回しつつ、全体として税金を抑えることも可能です。
③ 赤字を翌年以降の黒字から差し引ける(純損失の繰越控除)
開業したばかりの頃は、
「設備投資でお金を使いすぎて、今年は赤字だった…」
ということもあるはず。
青色申告なら、その赤字を最大3年間繰り越して、将来の黒字と相殺できます。
• 1年目:−50万円(赤字)
• 2年目:+100万円(黒字)
の場合、
100万円 − 50万円 = 50万円
にだけ税金がかかるイメージです。
青色申告承認申請書は“期限”に注意
青色申告を使うためには、
事前に「青色申告承認申請書」を税務署に出しておく必要があります。
• すでに事業をしていて、来年から青色申告にしたい → その年の3月15日まで
• 今年開業した → 開業日から2か月以内
が目安です。
開業届と同時に出してしまえば、青色申告のスタートがスムーズなので、
「開業届+青色申告承認申請書」はセットで出す
ことを強くおすすめします。
65万・55万・10万円控除のざっくり違い
• 65万円控除:
• 複式簿記で帳簿をつける
• 青色申告決算書を作成
• 期限内申告
• さらに e-Tax で申告 or 電子帳簿保存
• 55万円控除:
• 上記とほぼ同じだが、e-Tax・電子帳簿保存をしていない場合
• 10万円控除:
• 単式簿記など簡易的な帳簿でもOKだが、控除額は少なめ
これから本気で稼いでいくつもりなら、
会計ソフト+e-Tax前提で“65万円控除を取りに行く”設計にしておくと、将来かなり楽になります。
⑦消費税・インボイスはいつから関係してくる?【概要だけ】
個人事業主でも、売上が増えてくると消費税・インボイスの問題が出てきます。
ざっくりいうと、
• 課税売上が一定額(原則1,000万円)を超えると、
→ 消費税の納税義務が発生
• 取引先がインボイスを求めてくる場合、
→ 適格請求書発行事業者として登録するかどうかの判断が必要
という流れです。
ただし、開業したての個人事業主にとっては
• いきなり関係してくるテーマではないことが多い
• 制度自体も細かく複雑で、ここで一気に理解しようとすると挫折しがち
なので、この記事では
「売上が大きくなってきたら、
消費税・インボイス制度もチェックしよう」
というくらいの位置づけにしておきましょう。
売上が伸びてきた段階で、
「個人事業主の消費税とインボイス」をテーマにした別記事でじっくり勉強するイメージでOKです。
⑧副業会社員向け:開業届・年末調整との関係
最近は、会社員を続けながら
• ブログ
• Webライター
• 物販
• コンテンツ販売
などで副業収入を得ている人も多いですよね。
そういう人にとって気になるのが、
• 開業届は出すべき?
• 年末調整と確定申告の違いは?
• 会社にバレる?
といったポイントだと思います。
開業届を出すメリット
副業であっても、ある程度の規模で継続的に稼ぐなら、開業届を出してきちんと「個人事業主」として動くほうがメリットは大きいです。
• 青色申告が使える(特別控除・赤字繰越など)
• 経費計上の意識がはっきりする
• 事業用口座やクレカを作りやすい
など、長期的に見てプラスになる要素が多いからです。
年末調整と確定申告の役割分担
• 会社員としての給与 → 会社が年末調整
• 副業(個人事業)の所得 → 自分で確定申告
という役割になっています。
副業の利益が20万円を超えている場合は、原則として確定申告が必要になります。
会社にバレたくない場合のポイント
住民税の納付方法を
• 「給与からの特別徴収」ではなく
• 「普通徴収(自分で納付)」
にできるかどうかで、バレにくさが変わります。
ただし、自治体によって運用が違うので、100%防げるとは言い切れない点は注意です。
いずれにせよ、副業が本格化してきたら、
「開業届の書き方」「副業と年末調整・確定申告の関係」をテーマにした記事で、もう一段深く整理しておくと安心です。
⑨まとめ|「なんでも経費」じゃなく、長く続けられる節税を
最後に、この記事のポイントをまとめます。
• 個人事業主の税金は
売上 − 経費 = 所得
で決まり、ここに青色申告の控除が乗っかってくる
• 経費として認められるのは、
事業に関係する支出だけで、純粋な生活費はNG
• 自宅家賃・光熱費・通信費・車・カフェ代など、
生活と事業が混ざる支出は「家事按分」で割合を決める
• 「いくらまでOK」という明確な上限はないぶん、
説明できる合理性があるかどうかが超重要
• 青色申告を使えば、
• 特別控除(最大65万円)
• 家族への給与の経費化
• 赤字の繰越
などのメリットで、トータルの税負担をかなり抑えられる
そして何より大事なのは、
「家計を助けるための節税」であって
「一発当てるための脱税ごっこ」ではない
という感覚です。
• 経費のルールを理解して
• 青色申告をベースにして
• 会計ソフトやクラウドサービスを味方につけて
“ちょっとずつお金が残る仕組み”を作っていくことが、個人事業主として長く生き残る一番の近道だと思います。
この記事が、「どこまで経費にしていいんだろう…?」とモヤモヤしていた人の、最初の整理になればうれしいです。




